日本の夏は暑中見舞いや残暑見舞いを送るという特有の風習があります。
今はデジタル化により、手紙やハガキを送るということは少なくなってきましたが年賀状や暑中見舞い、そして残暑見舞いは、ただの挨拶状以上の意味を持ち、四季を大切にする日本の文化を映し出しています。
今回は少なくはなってきてるとはいえ、日本の夏の挨拶状「暑中見舞い」「残暑見舞い」について
- 違いは何?
- いつからいつまで?
- 書き方は?
- ビジネスで送る時の内容の違いは?
など疑問に思ったので調べてみました。
暑中見舞いと残暑見舞い
暑中見舞いは、梅雨が明ける7月初旬から8月7日の立秋前までに送るのが一般的です。
立秋を過ぎると、残暑見舞いとして送る時期になるのですが、これは、暦の上では秋に入っているけれど、実際にはまだ暑いためです。
暑中見舞いの主な目的は猛暑を過ごす中で相手を気遣うことにあります。
一方で、残暑見舞いは立秋を過ぎてもまだ暑い日が続く時期に送られますが、どちらもお互いの近況を気にしながら季節の移り変わりを感じることができます。
立秋は8月7日〜8月11月ごろまでの時期を指します。
「暑中見舞い」と「残暑見舞い」の違いは、送る期間の違いだけになります。
暑中見舞い
日本では古くから、年間を通じて大切な節目ごとに挨拶を交わす習慣があり、正月はもちろんですがお盆など、夏も重要な時期の一つとされています。
過去には贈答品を用意して直接挨拶をするのが一般的でしたが、時間が経つにつれてその方法も簡略化され、大正時代には暑中見舞いという形で広まりました。

お中元もこの名残が残っているんですね
昔は当然デジタル的なものがなかったため、このような挨拶状により、遠く離れた親族や友人との絆を深めるきっかけでもありました。
暑中見舞いを送る最大の理由は、厳しい夏の暑さの中で相手を思いやることです。
また、自分の近況を伝えたり、お中元のお礼としても使われることがありますがいずれにしても、夏の風情を伝える大切な手段となっています。

暑い時期に送る挨拶状ってことですね。
残暑見舞い
残暑見舞いは、暦の上では秋の「立秋」を過ぎても暑い日が続く時期に送られます。
まだ暑さが残っていることに対して、相手を気遣うことが重要です。
9月に入ってしまうと季節感がずれてしまうため、8月中に送ることが推奨されます。

真夏が過ぎても暑さが残っている時期に送る挨拶状のことです。
暑中見舞い専用ハガキ「かもめーる」は終了
「かもめーる」は毎年6月から8月にかけて郵便局で販売されていた、夏らしい絵柄が描かれていた暑中見舞い専用のハガキでした。
くじ付きで小さな楽しみも提供するため、受け取る人にとっては嬉しいサプライズとなっていた「かもめーる」ですが、電子媒体の普及により発行枚数が低迷し終了となっています。
2021年から、かもめーるに代わって「絵入りはがき」が登場しています。「絵入りはがき」は、暑中見舞い・残暑見舞い両方に使え、夏の挨拶にぴったりな絵が描かれていますが、くじは付いていません。
個人宛の暑中見舞い
個人宛もビジネス宛も大きな違いはないのですが、相手を思いやる言葉を添えることが一般的です。
例えば、
暑さ厳しき折ではございますが、いかがお過ごしでしょうか。
というような表現が良く使われます。
また、自身の近況を簡潔に伝えることで、相手に今の自分の状況を知らせることができます。
地域の気候や特有の梅雨明けのタイミングを考えて、最適な時期に送ることが重要です。
個人宛の残暑見舞い
残暑見舞いを送る際は、立秋を過ぎても暑い日が続いていることを意識して、相手を気遣うメッセージを添えます。
立秋:8月7日〜8月11月ごろまでの時期を指します。
残暑見舞いの冒頭文は、
暦の上では秋ですが暑い日が続きますね
8月中に送ることが望ましいですが、遅くとも9月初旬までには届けたいところです。
残暑見舞いでは、夏の終わりの暑さを気遣うメッセージを添えることいいですね。
ビジネス向けの暑中見舞い
ビジネスで暑中見舞いを送るときはマナーや礼儀を守ることが必要です。
友達や家族に送るものとは違い、取引先やお客様には時候の挨拶や適切な結びの言葉など、相手に対する敬意を示すように丁寧に言葉を選ぶ必要があります。
仕事で会社用の暑中見舞いの作成を頼まれて苦労した私がこの記事で、ビジネス向けの暑中見舞いの書き方や例文などをご紹介します。
ビジネス向け暑中見舞いの書き方
暑中見舞いでは、「拝啓」や「敬具」などの公式な書き出しや結びの言葉は通常使いません。
ビジネスで使う場合も同様で、相手の体を気遣うシンプルなメッセージを書くのが一般的です。
1~4の言葉の順に構成していきます。
1.暑中見舞いの言葉
- 暑中お見舞い申し上げます
- 暑中お伺い申し上げます
挨拶では、「暑中お見舞い申し上げます」と大きく書くことが多く、文末には「。」を付けません。
ビジネスの場合でも同じ言葉を使います。
2.時候の挨拶
時候の挨拶は、手紙や挨拶状で使われる現在の季節を表すフレーズで、その時期に適切のものを使います。
- 暑さ厳しき折、皆様ますますご健勝のことと存じます。
- 厳暑の折柄、皆様のご健勝をお祈りいたします。
- 盛夏の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
暑中見舞いは一年の中で最も暑い時期に送るものなので、「猛暑」や「酷暑」などの言葉を使って暑さを表現します。
また、ビジネス文書で相手の会社のことを指す時は「貴社」と書き、「御社」は話す時に使います。

3.日ごろの感謝
日頃からお世話になっている取引先に対する感謝の気持ちを表します。
ビジネス文書では、フォーマルな表現を使うことが望ましいので、その点を意識して書きましょう。
- 平素より格別のご配慮を賜り、心より感謝申し上げます。
- 日頃は格別のお引立てを賜り、誠にありがとうございます。
- いつも格別のお引き立てにあずかり、心から御礼申し上げます。
- 常日頃から格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
営業日やセール情報のお知らせ
夏に休業日があるか、セールやイベントを行う予定があれば、その日付を前もってお知らせします。
夏季休暇や休業がなく、普段どおり営業している時もその情報を伝えておくと良いですね。
- この夏も通常通り営業しております。新商品も多数取り揃えておりますので、スタッフ一同皆様のご来店を心よりお待ちしております。
- 誠に勝手ではございますが、弊社の夏期休暇を下記のとおりご案内申し上げます。お客様にはご不便をおかけしますが、何卒ご了承ください。
夏期休暇:〇月〇日~〇月〇日 - 当店では〇月〇日~〇月〇日の間、夏季特別なセールを実施しております。夏のアイテムがお買い得になっておりますので、この機会にぜひ皆様お誘い合わせの上、ご来店ください。
- 弊社の夏季休暇は下記の通りとなります。期間中のご連絡は休暇明けに順次対応いたしますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
夏期休暇:〇月〇日~〇月〇日
ここで気をつけたいのが「させていただく」や「いたします」を使う時で、使い方に気を付けなくてはいけません。


5.結びの挨拶と相手への配慮
終わりには、「今後ともどうぞよろしくお願いします」や「暑い季節ですので、どうかご自愛ください」といった言葉を添えることが一般的です。
また、文中の主語を複数形にすると、会社同士の正式な文書としてふさわしい形になります。
- 厳暑のみぎり、皆様のご健康をお祈り申し上げます。
- 今後とも変わらぬお引き立ての程、よろしくお願い申し上げます。
- 酷暑の折柄、くれぐれもご自愛ください。
- 時節柄、ご健康には十分ご留意ください。
- 急な暑さによって体調を崩されぬよう、ご一同様なにとぞご自愛ください。
- これからますます暑さが増すとの由、皆さまのご健康を心よりお祈りしております。
- 今後も変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。
- 暑気続く日々でございますので、くれぐれもご自愛ください。
- 今夏もスタッフ一同、暑さに負けず皆様のお越しをお待ちしております。
「自愛」という言葉は、「ご自身の体を大事にしてください」」と自分の健康や体調に気をつけることを意味していて、言葉自体に「体」が含まれています。
なので「お身体をご自愛ください」という表現は、「お身体をご自身の体を大事にしてください」と重ねて言っているようなものなので、使わないように注意が必要です。
6. 日付
さいごに日付として、「令和○年 盛夏」と入れるのが一般的でよく使われます。
日付の記載に関しては、「◯月◯日」と具体的な日付を書く必要はありませんが、「〇年〇月」とするのは間違いではありません。
年と季節だけを記すことで充分です。
- 〇〇年 盛夏
- 〇〇年〇月
ビジネス用暑中お見舞いの例文
上記の項目を使ってビジネス用の文書で使う暑中見舞いの例を紹介します。

例文があるとアレンジは比較的簡単に思い付きやすいのでぜひご利用ください。
基本的な夏季の挨拶
暑中お見舞い申し上げます
盛夏の候、貴社におかれましてはますますご清栄のことと存じます。
日頃は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
この夏も厳しい暑さが予想されますが、皆様におかれましてもどうかご自愛くださいませ。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
〇〇年 盛夏
営業案内と感謝を込めた挨拶
暑中お見舞い申し上げます
いつも格別のお引き立てにあずかり、心から御礼申し上げます。
当店は夏期も休まず営業しておりますので、お立ち寄りをスタッフ一同、心からお待ちしております。
今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
〇〇年 盛夏
夏季休業のお知らせ
暑中お見舞い申し上げます
平素より格別のお引き立てを賜り、心より感謝申し上げます。
暑い日が続いておりますが、皆様のご健康をお祈りしております。
さて、夏期休暇のため、以下の期間、休業いたします。
休業期間:〇月〇日から〇月〇日まで
ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
〇〇年 盛夏
夏期休暇と再開の告知
暑中お見舞い申し上げます
盛夏の候、貴社におかれましては益々ご繁栄のこととお喜び申し上げます。
日頃は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
誠に勝手ながら、夏期休暇を以下の通り設定いたします。
休暇期間:〇月〇日から〇月〇日まで
この間、ご不便をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
〇〇年 盛夏
セールやイベントの告知
暑中お見舞い申し上げます
厳しい暑さの中、皆様が元気で過ごされていることを願っております。
当店では、夏の特別セールを実施いたします。
期間:〇月〇日から〇月〇日まで
この機会にぜひご利用ください。
今後とも変わらぬご支援をお願いいたします。
〇〇年 盛夏
これらの暑中見舞いのメッセージは、個人宛てのものとほとんど変わりません。
期間の日にちの横に曜日を入れてもわかりやすいですね。
期間:〇月〇日(▲)から〇月〇日(▲)まで
ただし、他の企業やお店に送るときは、相手の会社を「貴社」や「皆さま」と呼び、自分たちの会社は「弊社」や「一同」として複数で表現することが大切です。
ビジネス向け残暑見舞い
8月上旬に「立秋」を迎えると、暦の上ではもう秋なので、この時期になると「暑中見舞い」ではなく「残暑見舞い」を送ります。
「残暑見舞い」は、まだ続く暑さについての挨拶状で、この時期にはまだ暑い日が続くことが多いため、体をいたわる言葉を伝えるのが一般的です。
挨拶文は「残暑お見舞い申し上げます」と始め、「立秋を過ぎても暑さが続いています」といったメッセージを加えます。
末に記載する日付は「〇〇年晩夏」や「〇〇年立秋」といった表記を使用します。
暑中見舞いと残暑見舞いの役割
暑中見舞いや残暑見舞いはただの季節の挨拶というだけではなく、遠くに住む親族や長い間連絡を取っていない友人へ連絡することのきっかけにもなります。
夏の雰囲気のハガキに一言でも相手を想うメッセージをシンプルに書くだけでも十分です。
デジタル時代だからこそ手書きの挨拶状
デジタルコミュニケーションの進化により、電子メールやSNSでの挨拶も増えていますが、だからこそ手書きのメッセージは特別な意味を持っています。
手書きの文字やカードのデザインは、受け取る人にとって視覚的にも心にも深く響きます。
こういった伝統を守り続けることで、デジタルではない、より人間的なコミュニケーションを保つことができます。
暑中見舞いと残暑見舞いの送り方のポイント
暑い季節を乗り切るための励ましや、相手への気遣いを表すために用いられる暑中見舞いと残暑見舞いもその一つです。
相手の地域の気候に注意
地域によって気候が大きく異なるため、梅雨明けなど送るタイミングは、送り先の地域の気候に合わせて調整します。
心温まるメッセージを添える
「暑中お見舞い申しあげます」や「残暑お見舞い申しあげます」という定型文に加え、一言でもシンプルにメッセージや近況を添えるといいですね。
デザインを工夫する
季節感を感じさせるデザインや色使いを選ぶことで、視覚的にも楽しめます。
タイミングを守る
暑中見舞いは7月上旬から8月上旬の立秋前まで、残暑見舞いは立秋に入ってから8月末または9月初旬までに送るという時期だけは気を付けましょう。
暑中見舞いや残暑見舞いはいつ送る?違いや例文もご紹介のまとめ
今の忙しい時代において、暑中見舞いや残暑見舞いを送ることは、ある意味新鮮で一時的にでも、大切な人々とのつながりを深められる機会になります。
時代が変わり、コミュニケーションの方法がデジタル化しても、暑中見舞いや残暑見舞いのような伝統的な習慣は依然として大きな価値を持っています。
実際、手書きのメッセージは、電子メールやSNSのメッセージとは異なる、温もりを感じる手書きのハガキは、デジタルでは決して得られない、人と人との繋がりの温かさを感じさせてくれます。
暑中見舞いや残暑見舞いは、個人宛でもビジネスの挨拶状としても、四季を大切にする日本の文化を守り続けるという意味でも、日本の夏の風物詩として、また人々の心を通わせる手段として、これからも大切にされるべき文化といえるのかもしれませんね。